『旅のラゴス』
北から南へ、南から北へ。高度な文明を失った世界で、超能力を持つ人々の間をひたすら旅し続ける男ラゴス。奴隷になっても、妻を持っても、自分の目的のために生涯をかけて旅をする彼の自由さに憧れずにはいられない作品。
今回紹介する作品は?
こんにちは! 本が大好き・晴星(せい)です。
今回紹介する『旅のラゴス』は、SF文学の巨匠・筒井康隆さんの連作短編小説で、1994年に新潮文庫から刊行された作品です。
「文明崩壊後の世界」「超能力」「旅」といった要素を持ちながら、とにかく自由に生きる主人公ラゴスの姿を描いた一冊。読み進めるうちに、その生き方に憧れを抱かずにはいられなくなる小説です。
筒井康隆さんの作品は独特の世界観とリズム感のある文体が魅力ですが、本作も例外ではなく、一度読み始めると最後まで手が止まらなくなる不思議な魅力を持っています!
あらすじ
北から南へ、南から北へ。高度な文明を失った代償として、人々が超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。
集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、奴隷の身に落としても、妻を持っても、生涯をかけて旅を続けるラゴスの目的は何か?
様々な街や村を訪れ、様々な人々との出会いと別れを繰り返しながら、彼はただ前へ前へと進み続けます。
異能力が当たり前に存在する不思議な世界に人間の一生と文明の消長をしっかりと構築した爽快な連作短編です。
本書の3つの魅力ポイント
- 文明崩壊後の世界で超能力が当たり前になった独特の世界観
- 執着を手放し、自由に生きる主人公ラゴスの魅力的な生き方
- 連作形式で読みやすく、スラスラと世界観に引き込まれる筒井康隆さんの文章力
感想(ネタバレなし)
固有の動物名や植物名が出てきたり、不思議な力が出てきたりする本作がスラスラと読めてしまうのは、連作形式ということもあるでしょうが、もちろん筒井康隆さんの文章力あってのことです。
本作は、人や生活の束縛感がない旅人を主人公においているためか、文章がねっとりとしておらず、湿度が高くなく、ただただ、ラゴスの旅路を覗き見しているような感覚でした。
1人称ですが、長々と胸中を語るような場面はなく、しかし、ラゴスの為人は読んでいくうちにどんどん見えてきて、心から憧れてしまいます。会話文のたびに改行を入れない点や1文が短い点も、さらりと読める秘訣なのかもしれません。
『たまご道』までは何日かに分けて読んでいたのですが、『銀鉱』からはノンストップで読んでしまいました。ラゴスの旅に引き込まれると、もう止まらなくなるんです。
※以降は、ネタバレありの感想を書いております。未読の方でお話の内容を知りたくないという方は、こちらでUターンをお願いいたします!
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感想(ネタバレあり)
『銀鉱』では、「え、奴隷になっちゃうの?」と焦りましたが、ラゴスは持ち前の学を用いて昇格。それでも、一緒に捕まった街の住人の命を助けられなかったり、ラゴスの学のせいで掘削や採掘に必要な人員が増え、余計に奴隷の命を奪うことになったりと、知識が必ずしも全員を救うわけではない状況が描かれています。
興味深いのは、ラゴスがそのことをあまり気にしていないこと。これも彼の「人となり」をよく表しているのではないでしょうか。
目的地であったポロでもそうですが、人に対して淡白で、とにかく引き止められること、自分の邪魔をされることをラゴスは厭います。自己中心的と言い切るには彼の人柄はいいのかもしれませんが、自分の欲に忠実であることは間違いありません。しかし、会う人会う人に好かれるという……なんて羨ましい。
周りばかりが盛り上がって、それを本人は気にしないし、知ろうとも思わないポロでの生活には笑ってしまいました。読書の邪魔をされないために2人も奥さんにして、1人が妊娠したら、もう1人が嫉妬するといけないからと情交に励み、本を読み終わったら少しの執着もなく、ポロを去っていく……。
こうして書き連ねていくと「勝手な人!」と思いましたが、読書中にはそんなことを思わなかったんですよね。ラゴスと一緒になって、先人(いま地球で生きる私たちのような存在だと思いますが)の知識を貪っている気になっていたのでしょうか。
ポロを去って、また、奴隷商人に捕まって、15年間書きためた羊毛紙をすべて失っても、ラゴスはやはり、すぐに執着を手放すのでした。故郷に帰り、兄の嫉妬を受けながらも、それに負の感情を持つのではなく、兄が学校長になることができるよう自分の知識を明け渡したり……なぜ、ここまで自由に生きられるのだろうと疑問を抱かずにはいられません。
そんな彼が唯一、最後に欲したものは、青春時代に出会ったデーデ。ヨーマ(だと思っていますが)との会話を最後に、吹雪の中に去っていく終わり方が見事でした。旅人ラゴスの明示的な終わりは、確かに見たくないものです。
「不自由だな」「縛られているな」と感じることがあったら、また、読み返したい作品です。
こんな人におすすめです!
こんな人には向かないかも……
筒井康隆さんの他作品
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著者・筒井康隆 さんについて
筒井康隆さんは、1934年生まれの日本を代表するSF作家・小説家です。
小松左京さん・星新一さんと並んで、「SF御三家」と称されることもあります。
『時をかける少女』『虚人たち』『七瀬ふたたび』『富豪刑事』など数多くの名作を世に送り出しており、ブラックユーモアや風刺、実験的な手法を用いた独特の作風が特徴です。
SF文学に留まらず、幅広いジャンルで活躍し、星雲賞、日本SF大賞、泉鏡花文学賞など多数の文学賞を受賞しています。2002年には紫綬褒章も受章しました。
奇想天外な発想と鋭い洞察力で、現代社会や人間の本質を描き出す筒井康隆の作品は、長く読み継がれる名作として評価されています。
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