詩・SS

【詩】20210405

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 上からは不均一な硬い音。
 下からは勢いよく流れるまとまった音。
 いつもの発車アナウンスとは違う。
 騒がしい世界は、私を隠してくれる。
 今日ばかりは、口遊んでいても許される気がした。


 ぼんやりとしたあちら側が見える。
 ビルと街路樹と自転車と私の足。
 あちらもこちらと似たようなものだ。
 黒と白にひかり揺れるあちら側へ行きたいと思った。
 今日ばかりは、俯いていても許される気がした。


 規則的に並べられたレンガを埋めるように落ちた
 小さな花弁は、茶色くなっていた。
 その脇で、白とピンクのツツジが満開を誇り眩しい。
 空の近くでは、余計なものを落とし色を変えたそれが、
 満足げに風に吹かれている。
 今日ばかりは、よそ見をしても許される気がした。
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